P5 通 信
NO.98
平成9年11月1日

冬の渇水

今年は,10月に傘を持ち歩く日が少なく,秋雨前線はどうしたのでしょうか。降雨量は,太平洋側を中心に極端に少ないそうです。このため首都圏の水瓶は,今年もピンチで冬の時期の渇水を心配する声がもう聞かれています。
生活の心配は,水だけではなく景気にも影を落とし,決算を見せていただくと,売上高は前年に比べ,減少か横這いで,その上受注(売却)金額を押さえられて,利幅もかなり減少しています。営業利益(売上から仕入と一般経費を引いた金額で,営業以外の収入や費用は考慮しないところの数字です)すらプラスにするのが難しくなってきています。
先行きが少しでも見えると良いのですが,経済情勢は,香港株の暴落以後,世界規模で株式市場が混迷し,余り明るい材料が見受けられません。長いトンネル,まだ明かりが見えて来ません。
こういう時は,焦らないこと,楽観しないこと,落胆しないことなど,なんだかボーットしていた方がいいみたいです。
しかしそうも行きませんので,なんとかこの時期を乗り切るための方策として,経費の削減を図る企業も見かけます。
経費の削減としては,従来多く言われていたのは「3K費」でしたが,最近では「5K費」を削減しようとされています。これは,「交際費」「広告宣伝費」「交通費」に「給与」と「光熱費」を加えたものです。これらの多くは働く人に影響を与え,一般消費者の購買意欲を後退させ,また景気の先行きに水を指すという様に悪循環になっております。
悲観的な話になってしまいましたが,今年も,もう11月。早いところでは,11月から忘年会が始まります。パーっと飲んで憂さを晴らしましょう。
11月の税務予定
個人事業税の納付(2期分)
通常月末まで
税を知る週間(税を払う週間で
ありません) 11日〜17
今月も消費税の話はお休みさせていただき,良く相続税の調査で問題となる贈与の話を少ししたいと思います。

1,志を無にする課税

ある父親がいました。多くの日本の父親の例に漏れず,毎日,働き蜂のように残業までしてよく働き,せっせと家にお金を運んできました。妻も夫の少ない収入を切りつめて預金をし,いつしかこの家族は,狭いながらも自宅を持つことができました。この父親,齢半世紀を過ぎる頃になりますと,身体も古くなったせいか,色々なところにガタがきて,自分が亡くなった後にかかる相続税が心配になってきました。決して多くない財産から,相続税を沢山払って,妻や子に残す財産が減ってしまうのではないかと心配するようになります。そこで,毎年,贈与税のかからない範囲で,その少ない財産から贈与していくこととしました。
その後長年の過労がたたって,お亡くなりになり,相続人は,今までに贈与した分を除いて相続税の申告をし,いくらかの相続税を払いました。
申告してから1年ぐらいしたある日,税務署から,相続税の申告内容について調査したいと言ってきました。
調査では,元々少ない財産でしたので,何も出るわけがありません。そして最後になって,亡くなった父親であり夫である被相続人から長年贈与され,蓄積された,相続人名義の預金などの財産が相続財産ではないかと指摘を受けました。良くある話です。
この時,相続人の預金を相続財産に入れて計算し直したとしても,それほど大きな税金の支払いにならないかも知れませんが,相続人は贈与してくれた亡き父親の意思を踏みにじることになってしまい,悩んでしまいました。

2,贈与事実の立証は?

この様に,税務調査では,被相続人以外の家族の預金が問題となる場合が多いのです。これは,文章で書けば,明確に書けますが,生きた生活それほど教科書通りにはいきません。実際には,はっきりとした贈与がなされたと言えるかどうか不明の場合が少なくないからです。例えば,子供や孫に贈与した預金なのに,必要になったら,それを親が勝手に使ってしまう場合も無いわけではありません。これでは,贈与の意思があったのかどうかはっきりしません。
そこで問題となる点を整理しておきましょう。
贈与が実際に行われたかどうかです。例えば,贈与契約書などがあれば,明白でしょうが,別に,契約書など書面によらなくても良いこととされていますので,一般には,贈与の純粋性を損なうような感じを受けるのか契約書を作らない場合が多いようです。そこで,契約書はないが,ちゃんと子供名義の預金となっているではないかと相続人は主張します。そうすると税務署では,それは,お子さんの名前を借りただけではないですかと言うことになります。
お互いに,言い張っても結論が出ませんので,判定の一つに預金証書は誰が管理していましたかとか,銀行の登録印は誰のものかとか,その預金の利息は贈与を受けた人以外の人が使っていなかったかなどで判断することが多いようです。もちろん,これらが,直ちに贈与があったかどうかを示すわけではありませんが,判断材料となることだけは確かです。

3,贈与税の申告

また,贈与税の申告があれば,強力な判断材料となります。そこで,いわゆる「六一申告」と言われるように毎年61万円の贈与をして,1千円の贈与税を納付する申告が,毎年かなりの件数に上っております。もちろん,60万円の贈与税の基礎控除以下ならば,申告は不要ですが,あえて申告をする方も見られます。これは,本来,贈与の有無と申告とは関係ないのですが,相続が発生したときのために申告しておく方が,良いだろうと考えるからです。この様な申告をしなければならないところに,贈与の持つ問題の複雑さが現れています。
しかし,贈与税の申告は,最近され始めた人も多く,相続税の調査で問題となる,奥さんやお子さんの名義の預金は,贈与税の申告をされる以前からであったり,申告以降であっても,運用によって,その金額が増えていることも考えられます。以前の資産の活用についてどのように行われたか,はっきり判らない場合も出てくると,また問題になります。
贈与税の基礎控除は,現在は,60万円ですが,これは昭和50年以降なったもので,昭和39年以降それまでは,40万円でした。40万円の頃から,その範囲内で贈与したとしても,現在では,相当な金額になることは確かです。そこで,税務署との見解の相違が問題となるかも知れませんので,しっかり主張して下さい。

P 5 Corner

補助金・助成金
従業員を教育訓練したり,定年延長などの雇用改善を実施した場合に国から,補助金や助成金が支給される制度があります。
景気低迷にあえぐ中小企業にとって,活用できるものも有るかも知れません。
例えば,55歳以上の高齢者(55歳は間違いではありません)や障害者などを雇う場合に,雇入れ後1年間に支払った賃金の3分の1の助成が受けられる「特定求職者雇用開発助成金」の制度があります。もちろんこの他にも色々な要件がありますので,詳しくは,公共職業安定所にお尋ね下さい。
又,従業員に研修や教育などを受講させる場合に対象となる「能力開発給付金」制度があります。受講させる従業員の年齢にもよりますが,例えば,大学に通うための賃金の助成としては,60万円を限度として受けられますし,受講料では,3分の1かあるいは5万円を限度に給付が受けられます。詳しくは,各都道府県の“職業能力開発主管課”にお問い合わせ下さい。
事務所主催の懇親会・忘年会は今月29日(土),午後6時より,茅ヶ崎で開催いたします。多くの皆様の参加をお願いいたします。参加者は,ご連絡下さい。

編集後記
透き通るような青空が広がり,天高く・・が実感できる季節ですね。冬の
渇水が心配でも,やはり天気の方がいいなんて勝手でしょうか。ところで保
険料控除の見直しもちらほら囁やかれてはおりますが,とりあえず今年の年
末調整には影響有りません。無くさない様に早めに担当者にお渡し下さい。
編集発行 株式会社プランニングファイブ


          Last Updated: 4/NOV./1997