P5  NEWS       SHONAN TAX OFFICE NO.229
 



 
 
平成20年10月1日
 
黒字倒産
 
 やっと、涼しくなってきました。暑い夏が終わりほっとしています。
 

 今年も後数ヶ月になりましたが、当初の予想通りもあまり良いニュースは聞かれません。

 

 このところ円高が続いて,ドルは105円前後でここ数日は落ち着いています。ユーロの下落も大きく、気がついたら150円を割って145円前後になっていました。トップクラスの企業が、一日に10%以上も株価が下落して混乱に拍車を掛けています。
 毎日のように負債額30億円以上の大型倒産が報じられ(http://www.tdb.co.jp/tosan/jouhou.html)、一日に数件となるときもざらです。そのうちの大半が不動産や建設関連企業です。

 

 その中でも直近の決算が黒字で倒産をする企業が現れています。2008年の上場企業の倒産は先月半ばまでで13社、そのうち5割強にあたる7社で直近の本決算の最終損益が黒字でした。
 

8月に民事再生法の適用を申請した幅広い不動産関連事業を営むアーバンコーポレイション(東証1部、広島市)は、直近の2008年3月期の連結売上高は前期比35%増の2,400億円、連結当期利益は300億円。数字だけ見れば優良企業でした。その後、数ヶ月の間に急激に資金繰りが悪化しています。

 

 連結財務諸表の総資産は6千億円で、そのうち棚卸資産は4千億円とすごい在庫。有利子負債も棚卸資産と同程度あり、資金繰りに行き詰まったようです。

 

 2008年4月-6月までの同社の四半期報告書では、関連全社の売上高500億円(前年同期比43%減)、営業損失300億円、純損失450億円となっていて、売上と同じだけ損失が出たことになります。 このレポートの中の「業績の状況」では、

「米国におけるサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融市場の混乱が続き、金融機関からの新規融資や短期借入金の借り換えが難しい状況となる中、物件売却による債務返済を最優先するため、保有不動産物件の簿価を下回る価格での売却を実施いたしました。 

 また、当第1四半期から棚卸資産の評価に関する会計基準を適用することに伴い、売買契約済み物件や売却予定物件において、売却予定価格が簿価を下回る額を評価損として原価計上したほか、その他保有物件についても保守的な基準で評価損を計上いたしました。主としてこれら要因から、不動産流動化事業、分譲不動産事業、アセットマネジメント事業で営業損失を計上いたしました。収益改善を目指して事業構造改革に取組む方針であるプロパティマネジメント事業とその他の事業でも、当第1四半期には不動産市場全般の停滞などからその成果の発現にほ至らず営業損失を計上するなど、全ての事業セグメントで営業損失を計上いたしました」

として,民事再生手続きへの移行がが報告されていました。

 
 黒字倒産は、大企業、中小企業とわず資金繰りの悪化によるものです。毎月の売上にバラツキが大きいところは要注意です。そして、サブプライム問題の余波などで年明けから金融機関の融資姿勢が厳しくなっているのも大きな要因となっています。金融機関も会計基準の変更で、今まで以上に損失に備えるための引当金の計上を余儀なくされて、貸したくても貸せないというのが実情のようです。
 このための緊急の経済対策が図られようとしていますが、果たして実効性があるのかは、時間との兼ね合いもあり難しいかも知れません。
 








 
10月の税務・総務予定
 

(税務)

特別農業所得者への19年分
  予定納税額の通知 15日まで
*個人住民税第3期分の納付            通常月末
 

(総務他)
*秋の厚生事業実施

 

 
 今月は、税の歴史の話はお休みにして別の話をしようと思います。
 実務でよく問題となるのが、資産を購入したときの経理処理です。少額(10万円未満)資産の購入ならば、全額、消耗品費などの費用として計上することができます。少額になってくれた方が、固定資産台帳に載せたり、翌期以降の費用に計上するなどの煩わしさがありません。
 

  ここで問題となるのは,“少額”はどこで判断するかです。机と椅子を一緒に買いました。全体で見るのか一個づつで見るのかと言った問題です。

 税法では、1年も使えないような物とか、取得価額が10万円未満であれば少額として,購入したときの費用にすることができるとしています。なんだかはっきりしませんので、取扱いでは(法基通7-1-11)、通常は取引される単位で判断します。例えば機械などは、一台又は一基ごとで、備品などは、一個、一組またはひと揃えで判定しろと言っています。そして線路にひいてある枕木や電柱は,単体では機能が発揮できないでしょうから工事費ごとだとしています。
 

 これでもはっきりとした回答が得られるわけではなく、そのため280億円もの取得が全額一時の費用なのか、いや減価償却資産で何年かで償却するのだという争いが、国と大企業との間でありました。先月(9月)に最高裁判所で、この決着がつきました。

 この事件は、NTTドコモが別の会社からPHS事業を営業譲渡により引き継いだ時に何十万回線の接続(器)の譲渡を受けました。回線1回線あたりでは、72,500円ですが、全体となると何百億円にもなります。結果は、NTTが勝訴して少額減価償却資産として一時の損金算入が認められました。
 

 これは、PHS電話の仕組みが分からないと理解できませんが、PHSは通話をする人がいろいろな基地局を経由しなが話をするもので一つでは機能しないのではないだろうかとも考えられます。しかし裁判所は、一回線でも十分に機能を発揮するとした判断をしました。

 

 すなわち取引単位と機能(利用できる)単位で判断するとしたようです。1回線でも充分使えると判断したからでしょうが、どちらともとれるところに難しさがあります。

☆新社屋への移転に伴って応接セット、机、椅子やロッカーなどを一括して購入しました。個々の資産は10万円未満ですが、全部では数百万円になります。この場合には,どのように判断するのでしょうか。実務では、通常の取引単位でまず考えることになります。しかし通常セット単位で取引される応接セットも一つづつの機能は有していても,一体で評価することになっています。
 

☆それでは、会議用の折りたたみテーブル・椅子考えてみます。通常テーブルと椅子四脚で利用されている物があったとします。一個一個は低額でもテーブルと椅子をそろえれば10万円以上になるかも知れません。どのように判断すればいいでしょうか。

 これは実務ではそれぞれ別に判定してます。これは応接セットの場合と相違するかと思われるかも知れませんが、取引単位、機能単位とも別個に判断できるとされたのではないでしょうか。
 

☆事務所の空間をパーティションで仕切るいわゆる間仕切りパネルについても,パネルは1枚ずつ取引されますが、1枚では通常本来の機能は発揮できません。その設置された状態をみて判断をすることになっています。これは機能単位で判断されていると言うことです。このときの配送料や設置作業代も取得価額の判定に含まれることは言うまでもありません。ちなみに「可動間仕切り」は、建物付属設備で耐用年数は,簡易なもので3年、それ以外は15年です。

 

 このように機能で判断される場合は多いのですが、取得価額の単位に関する裁判所の判断にも現れているように、機能を広く解釈するか狭く解釈するかで相違が出てしまいます。主に利用できる単位で判断せざるを得ないようです。

 

省略 

P5コーナー
(株)P5では、経営計画策定、保険・不動産等の資産運用、相続対策業務、パソコンの購入及び指導、貴社のホームページの作成・ドメインの取得、計算書類の公告のお手伝いをしております。
 
Q&Aコーナー
 今月も、また源泉所得税のに関するQ&Aです(http://www.nta.go.jp/)

米国の大学教授に支払う講演料

Q.わが社では、2週間の予定で来日した米国の著名なA博士(米国の大学教授)に講演を依頼し、講演料を支払うこととしました。
A博士は、大学とは関係なく個人の資格で来日したものですが、この場合、わが社が講演料を支払うときには、所得税を源泉徴収しなければならないでしょうか。
 

A.A博士は、個人の資格で来日しており、日本での講演は独立の資格で行う人的役務の提供と考えられますので、自由職業者に関する規定が適用されることとなります。

 日米租税条約では、芸能人又は運動家以外の自由職業者について直接規定しているものはありませんが、同条約にいう「者」には法人のほか個人も含まれ、また「企業」はあらゆる事業の遂行について用いられますので、この条約によって米国の企業は日本国内にある恒久的施設を通じて日本国内で事業を行わない限り、米国においてのみ課税します。したがって、この場合には、日本では免税とされますので、源泉徴収の必要はありません。

 

【米国人プロゴルファーに支払う賞金
Q.わが社は、ゴルフトーナメントを開催し、優勝者に対して賞金1,000万円と副賞(300万円相当の自動車)を贈ることとしていました。トーナメントの結果、米国の居住者であるA選手が優勝し、賞金及び副賞を獲得しましたが、この場合の源泉徴収はどうなりますか。
 

A. 国内法上、このような賞金及び副賞は、事業の広告宣伝のための賞金ではなく、人的役務の提供に対する報酬に該当することとなります。

 また、日米租税条約では、運動家等として日本で行う個人的活動によって取得する所得については、その総収入の額がその課税年度において10,000米ドル又は日本円によるその相当額を超える場合には、日本で課税することができることとされています。
 したがって、A選手の総収入の額が日本円による10,000米ドル相当額を超えていますので、日本で課税されることとなり、その支払の際には、20%の税率で源泉徴収をする必要があります。

 


編集後記

 世界的な株安と不況の中、政治では解散・総選挙が取りざたされていますが、国民の選択肢は少ない。パープル同盟党(英国のテレビドラマ)のような政党ができたらいいのに。

         編集発行 株式会社プランニングファイブ