P5 NEWS      SHONAN TAX OFFICE NO.165
 




 

平成15年6月1日
繰延税金資産



 りそなホールディングス(HD)に対し、政府は2兆円の公的資金の投入を決め、これにより同銀行は政府管理に移行することになりました。
 “りそな”は、昨年、統合前の旧大和、旧あさひ、近畿大阪の3行にすでに計1兆を超える公的資金が投入されており、今回の追加投入で総額が約3兆円強の公的資金が投入されることになりました。
 今回の“りそな”に対する措置は、今年3月期決算で、自己資本比率が2%に低下し、国内銀行の健全基準の4%を下回ったことによりとられました。公的資金投入により、政府は議決権の3分の2を取得、役員解任など特別決議ができるようになり、実質的に政府管理へと移行されます。
 今年3月期決算での自己資本比率の大幅な低下は、りそなホールディングス(HD)の監査を行っている、朝日監査法人が4月に、“りそな”銀行の繰延税金資産を「全額否認」したことから、資産価値が低下したことによるものです。
 朝日監査法人はりそな銀に統合された旧あさひ銀の監査をしており、旧大和銀の監査をしていた新日本監査法人と共同でりそな銀の監査をする予定で予備調査をしていましたが、否認を決めた直後に監査を辞退しています。この情報は金融機関ばかりでなく、産業界にも大きな衝撃が走りました。
 ただ、その後、新日本監査法人が単独でりそなの監査を行い、繰延税金資産を従来の6割程度認めて、自己資本比率を2.07%としました(連結自己資本比率では、3.78%(速報値)となっています

(http://www.resona-hd.co.jp/ir/pdf/i_03a/hd_0303renketsu.pdf)。
 

 このため政府は、りそな銀は債務超過ではなく資本不足と認定し、公的資金の再投入を決めたようです。
 今月は、この“繰延税金資産”とは何かをご説明します。


6月の税務・総務予定
(税務)
*所得税予定納税の通知
*個人住民税の納付(第1期分)

(総務他)
*梅雨時の食事,健康管理
*夏期賞与の査定,準備
 

 さて、“繰延税金資産”を説明しようとしますと、税効果会計からお話ししなければなりません。
 税効果会計とは、簡単に言うと、(あまり簡単ではないかも知れませんが)企業会計上の利益と、課税所得計算上の所得の認識が異なることが殆どですから、法人税などの税金を適切に期間配分することにより、法人税等(法人税、住民税、事業税)を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とするものです。
 難しくなってしまいましたが、要は、決算書上の税引後当期純利益を算出する法人税等の税金(損益計算書上では費用)を、その税金の算出過程から当期に関連するものと、翌期以降に関連するものに分け、翌期以降に関連するものは、当期のものから加減算の調整をして当期の純利益を出そうとするものです。
 方法としては、会計上の資産・負債の金額と税務上の資産・負債との間に差異(「一時差異」といいいます)がある場合、将来、この差異が解消されたときに、税金負担額を減額または増額させる効果がある場合に、その差異の発生年度に、翌期以降に支払うまたは減額される税額を貸借対照表上、繰延税金負債、繰延税金資産として計上するとともに、損益計算書上の法人税等を減額又は増額して調整する方法で、貸借対照表に計上される繰延税金資産、繰延税金負債の貸借対照表能力を重視した考え方で、資産負債法とよばれ,これが通常用いられます。この方式では、貸借対照表に計上される繰延税金は、将来の会計期間に対する影響に注目するため、差異が解消すると予想される期の税率を用いて計算し、将来において税率が変更された場合にはその都度再計算が行われることになります。
 自社の損益計算書の下の欄を見て下さい。
 税引前当期純利益  100
 法人税等       60
 当期純利益      40
 となっていたとします。この40は、本当に当期の利益を現しているかどうかが問題になります。
 上記の例で、当期に貸倒引当金(貸倒損失の見込額,貸引といいます)60を計上(費用)しましたが、税務上は10しか計上できなかったとしますと、
(当期)
a 税引前当期純利益  100
b 貸引 繰入超過額  50(60-10)
c 課税所得金額(a+b)150
d 法人税等(c×40%*) 60 
 当期純利益(a-d)   40 
となります。* は,法定実効税率といわれるもので、ここでは、法人税等の税金費用を課税所得の40%としました。

 次に翌期を考えてみます。税引前当期純利益は同じだったとします。
(翌期)
a 税引前当期純利益  100
b 貸引認容 *     △50
c 課税所得金額(a+b)  50
d 法人税等(c×40%*)  20 
 当期純利益(a-d)    80 
 * は、前期に有税で(課税されて)引き当てしていますから、翌期には貸引はすでに前期に課税されているとして、今期は減算することが可能になります。したがって、課税所得の計算でマイナスされます。
 すなわち、当期の加算が翌期には減算されるとしたら、当期の(税引後)の当期純利益は正しいモノサシといえるのかと言うことになります。
 そこで、税効果会計を適用して、

  当期 翌期
税引前当期純利益  100 100
法人税等  60  20
法人税等調整額 △20  20
税引後当期純利益  60  60
 当期分を仕訳で示しますと、
(借)繰延税金資産 20 /  (貸)法人税等調整額 20
 ただし、この法人税等調整額は、税効果会計を適用する場合の税効果相当額の調整科目ですので,税金の計算をする課税所得の金額には、影響しません。
 ちなみに“りそな”の平成15年3月期の連結貸借対照表の繰延税金資産は、5,200億円(資産は42兆円で、資本は 3,000億円)です。桁の違う話でした。 今月は、会計の話になってしまいました。“りそな”銀行の話から、税効果会計を簡単に説明したつもりですが、判り難かったと思います。もう少し詳しくお知りになりたい方は、中江が税経通信の2001年1月号に「税効果会計の基本的仕組み」で書いておりますので、お読み下さい。但し、判り易いかどうかは保証しませんが・・・

    SHONAN TAX OFFICE
     税理士 中江 博行
     税理士 大野千寿子
     スタッフ一同
P5コーナー
(株)P5では、経営計画策定、
保険・不動産等の資産運用、
相続対策業務を行っております。


税制改正


 今年の4月1日より、大きな税制改正が行われており、それについてはこのニュースで既に取り上げておりますが、まだまだご存じない方が多いようなので、しつこいようですが再度説明いたします。
1.少額減価償却資産の損金算入金額
 平成15年4月1日以降に購入した少額減価償却資産については、30万未満のものは、一度に損金算入が認められることになりました。
 損金算入できる少額減価償却資産については、これまで何回もその金額に変更があったため、一体いくらなの!とお思いの方も多いようですので、念のため!!
2.交際費課税の軽減
 資本金1億円以下の法人については、支出した交際費等の金額のうち400万円までの部分の10%について損金不算入とされることになりました。(これまでは20%が損金不算入でした。)なお400万円を超える分について、全額不算入とされるのは変わりません。
 これが適用されるのは、平成15年4月1日開始事業年度の法人からです。ここまでは一応減税ですね。
3.消費税改正
 免税事業者の条件である基準期間の売上高が1,000万円以下(従来は3,000万円以下)に引き下げになります。かなりの事業者が課税事業者になりそうです。
 また基準期間の売上高が5,000万円を超える事業者は簡易課税制度を選択することはできなくなります(従来は2億円超)。いずれも法人は平成16年4月1日以降開始課税期間から、個人事業者は平成17年分からの適用となります。
 消費税ですから増税とはいいませんが、負担が増えることになりそうです。

1、今月のパソコン教室は、

 省略


 編集後記  
 20周年記念企画ツアーには、沢山の皆様に参加頂き、盛況のうちに終了することができました。有り難うございました。これからもゴルフコンペ、チチ(大野千寿子)企画等予定しております。いつ仕事をするのかって?「・・・」いずれにしましても、ご参加いただかなければ始まりませんので、よろしくお願いします。
    編集発行 株式会社プランニングファイブ