P5 NEWS      SHONAN TAX OFFICE NO.164
 



 
平成15年5月1日
資本金1円会社

 
 今回は,勤務先を退社,独立して会社を設立しようとする場合の話です。会社を設立するには,合資会社を作る場合も見られますが,日本の会社の殆どを占める株式会社か有限会社で作る場合が多いと思います。
 株式会社の最低資本金は1 千万円(商法第168 条の4)で,有限会社は,300 万円(有限会社法第9 条)と定められていますので,現物出資する場合を除き,最低でもそれだけのお金を用意して銀行に預け入れなければなりません。
 実際には,前もって銀行と会社の設立について打合せをし,集まった資本金をすぐに銀行に預け入れ,銀行から保管証明を交付して貰い,それを添付して会社設立の登記を法務局に出します。この日が設立日になります。
 法務局では,書類上でチェックを行い,その後登記が完了することになり,通常,登記の完了するまでの期間,数週間は預け入れた資本金は使えません。会社設立では,資本金を用意することや用意した資本金もすぐには使えないことなどから会社設立を躊躇させる場合もあるようです。
 最低資本金を定めた目的は,会社を設立する時点で最低資本金以上の財産を保有させ、会社と取引をする相手先のリスクを軽減することにありましたが,最近の大型倒産事件から明らかなように、資本金の額が大きいからといって倒産しない訳ではありません。実際,中小法人では資本金の多寡で取引先を見ることはまれで,300万円であれ,1,000万円であれ何も意味が為さないという方が実情です。
 そうは言っても,最低資本金制度があるため,必ずしも資金力の十分ではないサラリーマンや学生等にとっては、会社設立は困難です。
 そこで、やる気と能力のある中小企業等の育成・発展を進め、我が国の経済活性化と雇用拡大を実現するためとたいそうな理由を付け,いわゆる“中小企業挑戦支援法”(平成14 年法律第110 号)」が成立し,最低資本金未満の設立が可能になりました。


5月の税務・総務予定
(税務)
*自動車税の納付
*固定資産税第1期分納付
*個人住民税特別徴収税額通知
(総務他)
*労働保険料の申告納付 20日
 

 この“中小企業挑戦支援法”では,事業を営んでいない個人が新たに会社を設立し、事業を開始しようとする創業者で,経済産業大臣の確認を受けた者が設立する株式会社及び有限会社については、最低資本金未満の資本金で設立することが認められ、その設立から5年間は資本の額が最低資本金未満でよいこととなっています。すなわち1円の資本金でも会社を作ることができますが,定款の認証や登記費用は当然かかります。また5年後までに資本金規制を満たせない場合には、合資会社などへの組織変更や会社を解散しなければなりません。
 この特例措置を受けられるのは,「創業者」に限られていますので,個人事業主として、すでに事業を行っている場合には適用できません。個人事業主の他でも法人の代表権のある役員は、除外されます。また,ここでの“個人事業主”とは、所得税法上の事業所得のある者をいい,給与所得以外に不動産所得、利子所得、配当所得等がある方でも、事業所得がなければ、個人事業主とはなりません。しかし、農業による所得は事業所得となりますので、農業所得のある方は、個人事業主となってしまいます。事業を廃止した後は可能かですって?経済産業大臣の確認さえうけられれば可能でしょう。
 またこの制度を利用して設立された会社は、会社情報や財務諸表を営業年度ごとに提出して、公表しなければならないことになっています。具体的には,営業年度経過後、3 ヶ月以内に、貸借対照表、損益計算書、利益処分案を経済産業局に提出します。通常毎年,所轄税務署に納税申告をするのですから,その決算書を提出するだけですので難しいことではありません。提出された貸借対照表は、経済産業局において公衆の縦覧に供されます。この場合,特別な手続は必要なく,情報公開法に基づいて請求する必要はありません。書類・貸借対照表を閲覧したい会社の本店所在地を管轄する経済産業局において、閲覧したい旨を申出ますと即日閲覧することが可能です。書類・貸借対照表の閲覧をするのに、手数料は必要ありませんが、コピーをすることはできないことになっています。
 この制度は,平成15年2 月1 日から平成20年3月31 日迄の期間適用が受けられます。最長平成25 年5 月31 日まで最低資本金規制をクリアーしない会社が存在する可能性があります。
 興味のある方は,経済産業省のホームページをご覧下さい(http://www.meti.go.jp/policy/mincap/)。

【消費税の改正の影響】
 平成15年度税制改正で,消費税が大きく改正され,次のように変更されます。
@ 消費税の免税点が基準期間の課税売上高が3,000万円以下から1,000万円以下に引下げられました。
 非常に大きな改正で,特に個人事業者では、130万人も新たに消費税の申告をしなければならなくなります。
 個人事業者は,基準期間である平成15年度の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで平成17年度の消費税の申告が必要かどうかが決まります。法人では,平成16年4月1日以後開始する課税期間ですから,1年法人の場合には平成17年3月末決算法人から適用になり,15年3月度の決算の数字を使うことになります。
A 簡易課税制度の適用上限が課税売上高2億円以下から5,000万円以下に引下げられ,50万件の事業者が本則課税となります。基準期間は,@と同様ですから,3月決算法人から影響を受けますので4月からの記帳は要注意です。
 問題は,改正で基準期間の免税点が1,000万円以下となったため新たに課税事業者となった事業者は,簡易課税を選択すべきかどうか迷うことになります。今年4月1日以後開始する課税期間より新しく課税事業者となる場合には,「簡易課税制度」の届出書の経過措置が設けられました(附則3)。
 現行では,簡易課税制度の適用を受けるためには原則として、適用を受けようとする課税期間の開始の日の前日までに税務署に対して簡易課税制度選択届出書を提出することが義務付けられていますが,新たに課税事業者となる者については、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を提出した課税期間から簡易課税制度の適用を受けることが可能となっています。すなわち,個人事業者の場合、平成17年1月1日から開始する課税期間の基準期間、つまり平成15年度の課税売上高が3,000万円以下1,000万円超である場合には、平成17年度より免税点制度の適用を受けることができなくなりますが,平成17年度中に簡易課税制度の届出書を提出すれば、この期から適用を受けることが可能となっています。今まで,届出書が開始の前日までとかたくなに規定していました。それは,開始するまでに選択等しなければ記帳や価格設定ができないとしていたからですが,その理由が意味のないものとなりました。
 省略


 5月19日(月)は申し訳ございませんが、事務所は休みになります。
    SHONAN TAX OFFICE
     税理士 中江 博行
     税理士 大野千寿子
     スタッフ一同

P5コーナー
(株)P5では、経営計画策定、保険・不動産等の資産運用、
相続対策業務を行っております。
 
労働保険料

 労働保険の年度更新の時期となりました。
 労働保険とは、既に皆様ご存じの通り、労災保険と雇用保険を総称したものです。労働保険は、法人、個人事業に関係なく、労働者を一人でも雇用している事業主は必ず加入しなければいけないことになっています。
 労災保険は、労働者が業務上の理由または通勤途上で負傷したり死亡した場合に、被災労働者やその遺族を保護するための必要な給付を行うためのものであり、雇用保険は、労働者が失業した場合などにその生活の安定を図るため等の給付を行うことを目的としています。このように労働者のための保険ですから、個人事業主や法人の役員は原則として労働保険や雇用保険の対象労働者とはなりません。
 本年度は、次の二つの改正があります。
@ H14.10.1より、雇用保険料率が 2/1000引き上げられて、通常の事業の場合には、15.5/1000から17.5/1000となっています。
 このために、確定保険料額の計算をするときに、H14.4月からH14.9月までと、H14.10月からH15.3月までの賃金総額を別々に集計してそれぞれの保険料率に基づいた保険料を算出し、それを合計して求めることになります。ちょっと面倒ですね。
A H15.4.1より、労災保険料が引き下げられています。料率は業種により異なりますが、勿論、危険度が大きい業種ほど料率は高くなっています。
 ただし、この料率はH15年4月1日よりの概算保険料に適用されるものですから、確定保険料が安くなるわけではありません。念のため。
 なお、申告納付は5月20日(火)までとなっていますので、期限に遅れないようご注意ください。
 
1、今月のパソコン教室は、
 省略


 編集後記  
 SARSの不安の中、大型連休(とはいっても、今年は二つに分かれてしまいましたね)は如何お過ごしでしたか?特に後半の連休はお天気に恵まれ、存分に遊べた人、家の中がきれいになった方など、様々でしょうか。事務所も今年初めて連休中に1日お休みをいただきました。リフレッシュして、5月申告に向けて頑張ります。
    編集発行 株式会社プランニングファイブ