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NO.94
平成9年7月1日

香港返還

 香港は、今日、7月1日中国に主権が返還され、155年にも及ぶイギリスによる統治の長い歴史の幕が下ろされました。
 イギリスに対する”香港の割譲”は、
 そのころ中国を統一していた清との、いわゆる南京条約(1842年)によって締結されたものです。
 当時の歴史の話を少し......
 1700年代後半に中国貿易を独占しはじめたイギリスは、交易を広州一港に制限する清の貿易政策を不満として1800年頃、マカートニーやアマートスらを派遣して交渉に当たらせましたが、中華の立場をとっていた清はなかなか応じようとはしませんでした。
 当時イギリスは、中国の茶を輸入して本国に送り、新大陸からの銀を中国に運んでいましたが、この時期には、中国の茶を本国に、本国の綿製品をインドに、インド産のアヘンを中国に運ぶいわゆる三角貿易を行って利益を上げるようになっていました。このアヘンの密貿易により中国ではアヘンの吸飲が広がり大量の銀が国外に流失するようになっていきました。早くからアヘンの吸飲や密輸を厳禁していた清は、この情勢を解決するため、1839年に林則徐をこの取り締りにあたらせたところ、彼はアヘンを没収廃棄した上、イギリスとの一般貿易をも禁止する強攻策にでました。イギリスは武力で自由貿易を実現させる好機とみて、翌年アヘン戦争をおこしました。清は、武力に勝るイギリス軍に連敗し、1842年に南京条約を結ばされました。条約で、清は香港の割譲、上海を含む5港の開講、賠償金の支払いなどを認め、翌年には領事裁判権などの不平等条約を結ばされることになりました。その後清は、アメリカと望厦条約をフランスと黄埔条約を結びイギリスと同様な権利を認めざるを得なかったのです。
 その後、日本も江華島事件を利用して朝鮮に、また1894年に日清戦争へとつき進み、1896年の下関条約において、清に対して遼東半島・台湾・澎湖諸島の割譲(その後「三国干渉」がありました)、賠償金の支払いを認めさせ、欧米列強に続いて大陸侵略の足場を築いていったその頃から続いていたのが、この香港でした。
 これは、高校の教科書である山川出版の『詳説世界史』(262頁)を参考にしております。昔この教科書で勉強したかたも少なくなかったと思いますが、香港の返還を機にもう一度、現在の教科書を読んでみました。
 大きな歴史の流れの中では、当たり前だと思われたことも、歴史を見直せばは大きな恥辱として今日まで刻み込まれていたような気がします。今香港は祖国中国に復帰します。一国二制度の下で、通貨制度も含めて大きな問題が今後噴出しないとは言い切れませんが、今日は過去の歴史を精算する意味でも意義ある重要な日となりました。
 返還の日、香港は雨だったようです。その中で、片や香港には社会主義国の赤い旗がはためき、片や英国王室の専用ヨットで前総督と英国皇太子は香港を去って行きました。この二つの光景の意味するものは、次の時代でどのように写るか興味深いところです。

7月の税金予定
源泉所得税(納期の特例分を含
ます) 10日
所得税の予定納税 末
固定資産税第2期分の納付 末

また消費税のお話です。
 今回は、消費税の滞納に対する国税庁の対応についてお話しいたします。
 平成8年分の期限内に納税が済んだ件数は、所得税で94%、消費税ではこれより少し落ちて90%だそうです。そうなると一割が当初滞納していることになります。このため、国税庁では悪質な滞納者には「売掛金」の差し押さえもすることにしたと大々的に報じておりました。これにより、売掛金を差し押さえられた事業者は売り掛け先からの信用を失いかねない事態となると懸念されています。
 そのほかに、地方公共団体における入札や制度融資を受ける際に「消費税納税証明書」の提出を義務付けるように関係する地方公共団体等に要請するとしています。地方公共団体等がこれを受け入れれば、事業者はこの証明書がなければ入札に参加できないとか地方公共団体の実施する制度融資も一切受けられないことになります。国税庁の要請に対して、青森県・大分県・徳島県などこれをおおむね受け入れる回答を行っているそうですが、東京都・埼玉県などの都市部においては、「規制緩和の流れに逆行する」として”拒否”の傾向が強いようです(週間税務通信2480、3)。
 税金の滞納については、租税として法律で決められた、国民の財産が入ってこないのですから、厳格に対処すべきであろうと思います。しかし一方で、国税については、収納の努力が十分になされているとはどうも思えません。手形による納付を申し込んでもなかなか受け入れてもらえなかったり、なおざりな対応がみられます。通常の企業では、手形であってもひとまず預かって、それからじっくり早期回収の相談をするのが通常だと思いますが、国税では資金繰り表を持ってこなければ手形を受け入れないと言うのでは、いたずらに時間を先延ばしするだけで、結局滞納額の減少にはなりません。差し押さえする前に、少なくとも収納の努力を一般企業並にすること、もっと大事なことは重要な部署である収納の係りに優秀な人材を登用すべきです。
 「消費税納税証明書」の提出義務を課すことは役所的な短絡な考え方です。
 これが実際に義務づけられれば、入札や制度借り入れに結果として免税事業者を排除ないし不利に扱うおそれが出てきます。消費税を納付する事業者が愛国者だとして特別に扱うことは、誰もが平等に扱われなければならないと言う原則に反します。結果的に消費税の納税額によって差別する道を開くことになりかねないのではないでしょうか。
 一歩譲って消費税の納税を確認する必要があるとしても何でもかんでも証明書の交付を得なければ、目的を達することができないわけではありません。証明書というのは権威主義の現れだと思うのですが、証明書の交付する部門を作くれば、当然発行する場所にはそのための人員が必要となりますし、発行を求めるものには、時間と、お願いと、おまけに手数料まで取られます。証明書の交付をさせてトラブルがあった時に誰かのせいにするという方式は、日本ではよく用いられるところですが、納付したかどうかは、納付書によって確認できますし、申告書の控えによっても納税額は確認できます。 結局のところ、何かを要求する場合に、役所の証明以外信じないとするか、それ以外のものでも結果的に相違がないとして実質をとるかの違いでしょう。
 今そしてそのようなものがなんと多いことか.....
 さて今月の消費税の話は違った方向にいってしまいましたが、いずれにしましても、今後消費税の納税額が大きくなるでしょうから、前もって納税資金を確保しておく必要があります。滞納すれば14%以上の利息が待っています。サラ金並ですので、やはり滞納しないことが一番です。

  これから、暑い日が続くと思われます。
  どうぞ身体に気を付けてお過ごしください。

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水を浴びる子供(イソップ物語)

 夏の日差しが肌を刺すように降り注ぐ昼下がり、子供がある河で水を浴びていました。この河は流れが速く、その上深みがあるため、この場所では、水浴びしてはいけないと言われていました。急にその子供は、深みにはまり溺れ死にそうになりました。そこを偶然通りがかった旅人をみつけて、この人に助けを求めました。しかしその人は子供を無謀だと非難しました。するとその子供は、彼に向かって「しかし今は私を助けてください。後で助かったところで、どうぞ非難してください。」と言いました。
 子供に接する場合に、まず叱るところから始めても、子供にはなにもなりません。一般の社会の場でも同じ様なことが起こっているかも知れません。非難することは簡単ですが、それでは本質の解決にはならないことを教えてくれています。このお話は、神戸の小学生の殺害事件、総会屋に対する利益供与事件などで、何か本質の似かよったものを感じました。

編集後記
季節はずれの台風、想像を絶する事件と、6月の日本列島は大きく揺れま
したが、7月に入り湘南海岸は海開き、お隣の平塚では七夕祭りが始まり、
にぎやかになります。源泉所得税の納期の特例の納付期限が10日までです。
納付書は順次お送りしておりますので期限内納付をお願いいたします。
編集発行 株式会社プランニングファイブ


 
Last Updated: 7/JUL./1997