P5 NEWS     

SHONAN TAX OFFICE NO.264   
 

 
平成23年10月1日
 
台風で雑損控除
 

 先月(9月)もまた,東海地方に上陸した台風(15号)により各地に被害をもたらしました。今年は,災害の多い年です。

 関東地方でも長い時間強風にさらされ,住宅や家財などに損害を受けた方も少なくなかったようです。この場合には,所得税の雑損控除を受けられることがありますので,領収書等を保存しておいてください。

 

 国税庁は,先月,平成22年分の「民間給与実態統計調査」を公表しました。昨年も10月号で掲載した内容ですが,こりもせずに取りあげます。

 

 この調査の統計数字の前提は,平成22年12月31日現在で民間の事業所に勤務している給与所得者(従業員(パート,アルバイトを含む),役員)を対象としたもので,概略化してご説明します。

@ 平成22年12月31日現在の民間給与所得者数は、昨年比微増の4,500万人。このうち年末調整をしたのは4,200万人です。この差は,年末調整ができない高額の収入者か二カ所給与の人の分か,その他の理由かは不明です。

A民間の事業所が支払った給与の総額はこちらも微増の200兆円。

B源泉徴収された所得税額は7.5兆円。所得税収12〜13兆円のうち大体年間10兆円が源泉所得税ですから民間以外で,4分の1あるということになります。

C男女別にみると、男性2,800万人、女性1,800万人で,6:4の割合です。平均給与は410万円。でも平均給与の男女差は大きく男性500万円,女性270万円で,女性は男性の半分程度になっています。この差が未だ縮小傾向にありません。

D給与階級別分布をみると、男性では年間給与額300万円超400万円以下の者が500万人(全体の20%)、女性では 100万円超200万円以下の者が500万人(全体の25%)と最も多くなっています。

 


10月の税務・総務予定
(税務)
特別農業所得者への予定納税額   の通知     17日まで
*個人住民税第3期分の納付            通常月末
(総務他)
*秋の厚生事業実施

 
 

今回は,災害が多いので,「雑損控除」を取りあげます。

 所得税では,最低生活費を浸食しないように基礎控除,扶養控除や医療費控除のなどの各種の所得控除が定められています。この所得控除が今後どうなる方向にあるのかという話はおきまして,今現在ある所得控除の一つに「雑損控除」がありますので,そこからスタートいたします。

 所得控除は,所得から控除され,税率をかける前の段階の控除ですので,ローン控除などの税額控除と違い,10万円の所得控除で,10万円税金が少なくなる訳ではありません。

 雑損控除は,

@災害又は盗難若しくは横領によって、

A納税者本人か納税者と生計を一にする配偶者や扶養親族の所有する生活に通常必要な住宅、家具、衣類などの資産(事業用の資産や別荘、書画、骨とう、貴金属等で1個又は1組の価額が30万円を超えるものなどは当てはまりません。)の損害を受けた場合です。

 災害等の内容は,

@ 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害

A 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害(原発事故も入ります)

B 害虫などの生物による異常な災害

C 盗難

D 横領

 です。このため、詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません。

 

 雑損控除として控除できる金額は,

 次の二つのうちいずれか多い方の金額です。

(1) (差引損失額)(注)−(総所得金額等)×10%

(2) (差引損失額のうち災害関連支出の金額)−5万円

 (注)差引損失額=損害金額+災害関連支出の金額−保険金等により補てんされる金額

 ですから通常は,災害関連支出が有る方が控除が大きくなります。そして雑損控除を受けるためには,確定申告が必要です。

 また雑損控除によりその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以降3年間の繰越控除制度があります。

 災害を受けた場合の税務上の救済策としては、雑損控除とは別に「災害減免法による所得税の軽減免除」がありますが,これは,所得制限の他に住宅または家財に50%以上の損害を受けた場合ですので,近隣では,千葉県の一部を除いては適用がないと思われます。いずれにしましてもどちら

が有利かで選択します。

 

Q1 台風による風水害で,次の様な費用を支出しました。災害関連支出に該当するでしょうか。
 @畳の取替え費用
 A衣類,家具の買替えの費用
 Bエアコンの外部動力部分の修理費用(5万円)
 C浄化槽の修理費用(9万円)
 
 

A 被災した住宅家財等の取壊しや撤去費用などで支出した費用が対象になります(所令206)。また災害により住宅家財等に被害が生じたり損害が生ずるおそれがあると見込まれる場合に,被害の拡大又は発生を防止するため緊急に必要な措置を講ずるための支出も対象となりますので,豪雪によって住宅の損壊を防止するための雪下ろし費用なども雑損控除の対象になります。

 雑損控除の対象となる「災害関連支出」には原状回復等のためにやむを得ず支出した金額で、その災害後1年以内に支出したものが対象になりますが、原状回復費用であっても、資本的支出の額とされる金額は、対象となりません。

 本問の場合のこれらも費用は,Aを除いては,雑損控除の対象になるものと思われます。Aの衣類,家具の購入費用そのものは,雑損控除の対象にはなりません。強いていえば損失額の計算において損失発生直前の時価の算出の参考にされる程度です(『実務相談録』1275頁六法出版)

 

Q2 次の場合の損失額はどの様に計算しますか。
 @
風呂場のタイルが壊れたので,a壊れたタイル部分の修理を行った,bユニットバスに取り替えた
 A
壁にヒビが入いり,aヒビが入った壁の面のみ修理を行った,ヒビの入った壁を含め、部屋全体の壁を修理した
 B
屋根の瓦が壊れたので,a壊れた瓦の修理を行った,b瓦の壊れた部分を含め、屋根全体の修理を行った
 C
家財収納用の小屋に被害を受け、a解体撤去費用を支払った,bこの小屋(耐用年数15年)は、木造で30年前に100万円で建てたもの
 

 A 損失額の計算には,「被災直前・直後の時価」を基本に考えます。次に問いの場合の計算方法の一例を示します。

 @a,AaとBaは,修繕費用(原状回復)により、損失額を計算します。

 @b,AbとBbは,改修工事には、修繕費用(原状回復)と資産の価値を高める部分が含まれており、この区分が可能であれば、修繕費用の分を損失額として計算できます。しかし、区分が困難な場合は、支出した金額の30 %を修理費用の分として損失額計算する方法によることができます。

 Caは,災害関連支出として損失額に計上します。

 Cbは,災害直前の小屋の時価は損失額の対象となります。この場合には、耐用年数(簡易用建物自家用15 年)を超えた建物であることから、取得価額の10 %( 10 万円)を時価相当として計算することも可能だと思われます。

 なお,住宅・家財について取得年月日、取得価額から計算する方法もあります。

参考URL

 
 省略
  Shonan Tax Office
   (http://www.shonantax.jp/)

 

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税理士制度−19
 

 20回近くに亘って,税理士制度を紹介してきました。

 スタートは,明治維新以後の国家の基盤として税制の確立が急務であったこと。年貢から地租改革へと維新の大改革と同様に税制面でも急激な改革が行われたこと。税理士制度の前身である税務代弁者など,必要性から世界でも少ないシステムである税理士制度が存在したこと。そして大戦後,より近代的な税制へと舵を切った歴史をお話ししました。

 その中で税務環境の整備として,税理士制度,租税法の研究そして税務協力関連団体の充実などいずれも重要な意味を持っていました。いま,戦後の新しい税制は60年の還暦を超えて,ますます重要になっています。

 国民から不公平感をもたれる税制では,制度として成り立ちません。そのためには行政の責任も厳しく追及されますが,税務行政の人員は,56,000人。一方,国家公務員の給与は20%ダウンさせる方向で動いています。その結果,税務行政のみでは税の仕組みを維持することはできない恐れが出てきています。

 税務環境の整備では,租税法の研究は確実に発展しました。関連団体は,半世紀に亘る歴史の中で,制度疲労を起こしている感は否めませんが,その中で公益化するなど,新しい力としてスタートすることが期待されています。

 問題は,税理士制度はどうあるべきかです。この制度は,その目的から厳しい国民のチェックは当然必要でしょうが,一方で,組織内で期待に応える方策を打ち出すことができるかも重要です。

 明確で公平な決められたルールの中で適正な申告・納税を確保し,納税者の権利を擁護して,納税者・国民にクリアーな税制を支える税理士制度が必要です。そのための税理士制度の改正が必要となっています。いま,税理士数は,この10年間で確実に増加しています。増えることが良いことならこのままで良いでしょうが,資格としては非常にバランスの悪い制度になっています。近年は,特に年齢等で申告が困難な方への税務支援に対して消極的な参加にもこの制度の問題があらわれています。これは税理士試験合格者は半分以下ですが,その他の登録者は増えていることに起因しているのかも知れません。税理士試験合格者は,毎年1千人前後で,それ以外がその倍以上を占めています。この続きはまた。

 

省略

 


編集後記 9月は,また台風15号が関東地方をなめるように北上した影響で,交通機関がストップし首都圏では多くの帰宅者の足を奪い,また長時間の強風により人的・物的な被害が出ました。そこで今回は,雑損控除を取りあげました。ガンバレ日本!!被災地に安心できる生活を!!
   
編集発行 株式会社プランニングファイブ