P5 NEWS     

SHONAN TAX OFFICE NO.276   
 




 

 
平成24年10月1日
 
教育費の贈与
 

 先月末9月30日は,台風17号が日本列島を縦断しました。この台風の特徴は,強い勢力を維持して本土に上陸したことや足が速かったなど,強風と暴風雨の荒れ狂った月初めになりました。温暖化で台風が大型化の傾向にあるようです。

 先月(9月),文部科学省は来年度(平成25年度)の税制改正に関する要望事項を公表しました。大きく分けますと,@寄附ブームの後押し,A世代間資産移転促進・教育費負担軽減,B教育、文化、スポーツの振興の後押しとC技術革新のための税制上の特例などです。

 @の寄附金については,寄附金控除も年末調整の対象にしようという要望です。これは既に24年度税制改正大綱の検討課題に入っていましたので25年度で実施される可能性は大かも?また面白いのは,A世代間資産移転促進についてで,「高齢者層に偏在している“眠れる金融資産”を子どもの将来の教育費として市場に引き出した上、成長マネーとして有効活用するとともに、子どもの教育資金の確保を図ることを目的とするもので、具体的には、例えば、祖父母が孫に対して教育費として一括贈与した資金について、贈与税を非課税とする。」というものです。

 早い話,孫の教育資金を一括で(毎年少しずつではなく)贈与してもらおうとするものです。今までは毎年必要な孫の教育費の贈与は,扶養義務の範囲として非課税とされてきましたが,それをもっと進めて,例えば大学でしたら4年分の教育費を贈与して,これを非課税にするというものです。細かいところは分かりませんが,この制度の適用のために区分管理する金融機関の通帳を作り,そこから支出しようとしているようです。

 世の中,シニア層をターゲットとした商品の開発が盛んですが,これは国の高齢者向け商品と言ったところでしょうか。

 

10月の税務・総務予定
 

(税務)
*特別農業所得者への予定納税額の通知       15日まで
*個人住民税第3期分の納付               通常月末
 

(総務他)
*秋の厚生事業実施

 

 

 昨年12月の改正(平成23年法114号)で,国税に関する一般法である「国税通則法」に税務調査手続の明確化が図られ,平成25年1月1日以後の調査から適用されることになりました。これにつきましては,8月号で記載させて頂きましたが,税務調査手続が法定化され,行政にとっても影響の大きい改正となりましたので,立法趣旨の円滑な実施のため今月10月1日以後開始する調査から、税務調査手続のうち、事前通知などを先行実施することとなりました。これに合わせて関連の法令解釈通達が制定され,また事務運営指針で調査に当っての基本的な考え方を定めています。これらの一環として、国税庁は,「税務調査手続に関するFAQ」を公表しました。このFAQには一般納税者向け(「一般Q&A」とします。)と税理士向け(「税理士Q&A」とします。)の2種類が用意され、一般納税者向けは31問,税理士向けは6問が掲載されています。今月は,その中からいくつか・

 
[調査の連絡について]

 

一般Q&A-問14 税務代理をお願いしている税理士がいるので、その税理士にも事前通知を行うようお願いしたいのですが、何か手続が必要でしょうか。
 

A.「法令上、実地の調査の対象となる納税者の方に税務代理権限証書を提出している税理士等(以下「税務代理人」といいます。)がいる場合には、納税者の方ご本人に加え、その税務代理人の方に対しても事前通知を行うこととされています。したがって、特別の手続は不要です。

 なお、事前通知事項のうち、調査の対象となる税目・課税期間等の事前通知事項の詳細については税務代理人を通じて聞くことにしたいという要望がある場合には、調査担当者が事前通知を行うための連絡をした際にその旨をお伝えください。」

 

 これについては「税理士Q&A-問1」で税務署からの事前通知は(納税者に)直接ではなく,税理士に直接調査の連絡はできないかという質問がありました。今までは所轄税務署によっては連絡は納税者ではなく税理士に行われていました。税務署から納税者に直接連絡がいきますと,人によっては驚かれたり,休み前に連絡があると落ち着かない休日になってしまう人もいるようです。税理士に最初に連絡した方が効率的でもあり,納税者の方も受け入れやすく良いかなと思っていました。でも中には,「最初に何故納税者である私の所に連絡が来ないんだ。」とクレームを付けられる人もいたようです。殆どの場合は,納税者は税理士を信頼して頂いていますので私どもの周りでこのようなクレームは聞いたことがありません。これからは必ず納税者,税理士と,かつこの順番で連絡されます。「納税者の方から事前通知事項の詳細は税務代理人を通じて通知しても差し支えない旨の申立てがあったときには、納税者の方には実地の調査を行うことのみを通知し、その他の事前通知事項は税務代理人を通じて通知することとします。」(税理士Q&A-問1)。

 やはり手続としては最初に納税者への連絡が正しいと思いますので,連絡がありましたら「具体的な内容は税理士に連絡してください。」と言っ

て頂ければ,こちらで対応いたします。

 

一般Q&A-問7 法人税の調査の過程で帳簿書類等の提示・提出を求められることがありますが、対象となる帳簿書類等が私物である場合には求めを断ることができますか。
 
 

A.「法令上、調査担当者は、調査について必要があるときは、帳簿書類等の提示・提出を求め、これを検査することができるものとされています。

 この場合に、例えば、法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金について事業関連性が疑われる場合にその通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものと考えられます。

 調査担当者は、その帳簿書類等の提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、ご理解を得られるよう努めることとしていますの

で、調査へのご協力をお願いします。」

 

一般Q&A-問8 調査対象となる納税者の方について、医師、弁護士のように職業上の守秘義務が課されている場合や宗教法人のように個人の信教に関する情報を保有している場合、業務上の秘密に関する帳簿書類等の提示・提出を拒むことはできますか。
 

A.「調査担当者は、調査について必要があると判断した場合には、業務上の秘密に関する帳簿書類等であっても、納税者の方の理解と協力の下、その承諾を得て、そのような帳簿書類等を提示・提出いただく場合があります。

 いずれの場合においても、調査のために必要な範囲でお願いしているものであり、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものです。調査担当者には調査を通じて知った秘密を漏らしてはならない義務が課されていますので、調査へのご協力をお願いします。」

 
○佐々木(憲)委員 医師、弁護士、税理士などは、法律上、守秘義務が定められておりますそういう職業の方が、例えば、税務署から医師がカルテの提出を求められて任意で提出をしたその場合、後で、情報元になる人が、自分のプライバシー、個人情報を開示したのは守秘義務違反だということで訴えられた場合、それは守秘義務違反には当たらないというふうに断言できるのかどうか、お伺いしたいと思います。
 

○野田国務大臣 刑法上、医師が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときには、秘密漏えい罪に問われることになりますが、正当の理由のある秘密の漏えいは犯罪を構成しないと考えられます。この場合において、税務調査は一般的には正当の理由に当たると考えていますが、いずれにしましても、御指摘の事例が秘密漏えい罪に当たるか否かについては、事実関係に即して個別に判断されることになると考えます。
 

○佐々木(憲)委員 これも、明確な守秘義務違反に当たらないという断言ができないわけでございまして、そういう書類まで、任意調査という枠の中で事実上プライバシーの侵害まで求めるような、そういうやり方をするというのは非常に問題があるというふうに思います。(衆議院財務金融委員会第6号平成23年3月8日議事録)

 

一部省略

 

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特定支出控除つづき
 

 前回9月号で,給与所得の計算における「特定支出控除」についてお話ししました。

 国税庁では,この度,「平成25年分以後の所得税に適用される給与所得者の特定支出の控除の特例の概要等について」として解説及び質疑応答を公表しました。

 

問 勤務先より弁護士の資格を取得するよう命令を受け、法科大学院(ロースクール)に通ことになりました。この法科大学院に係る支は、特定支出となりますか。
 

A.「・・その資格を有する方に限り特定の業務を営むことができることとされている弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、医師、歯科医師などの資格を取得するための支出は、特定支出の範囲から除かれていましたが、平成24年度の税制改正において、これらの資格を取得するための支出についても、その支出がその方の職務の遂行に直接必要なものであることについて給与等の支払者によって証明されたものは、特定支出となることとされました。

 現在、基本的には法科大学院で一定の学位を取得しない限り司法試験の受験資格が得られず、弁護士の資格を取得するための一般的な手段が法科大学院を修了する方法であると考えられることなどを踏まえれば、法科大学院に係る支出は、資格取得費として特定支出となります。

(注) 会計大学院(アカウンティングスクール)に係る支出については、会計大学院は、それを修了することにより、公認会計士試験の一部科目を免除されますが、法科大学院とは異なり、受験資格を得るための支出ではないため、資格取得費としては特定支出とはなりません。

 また、税法や会計学に関する研究により修士の学位を取得するための支出についても、これにより税理士試験の一部科目を免除されますが、同様に資格取得費としては特定支出とはなりません。」

主な点を整理しますと・・

*転勤に伴う支出について

 グリーン乗車券やファーストクラスの航空券は対象となりません。

*勤務必要経費について

 電子版の図書の購入費用は特定支出の対象となりますが,閲覧するためのパソコンなどの機種の購入支出は対象となりません。

 勤務場所で着用が求められる背広などの衣服の購入費は,職場以外でも着用する場合で有っても職務の遂行に直接必要だとして給与の支払者か証明されれば対象になります。

 職場の同僚との懇親会や慶弔のための支出は対象になりません。

 
一部省略
 

編集後記 寒暖の差が大きく体調を崩している方もいるようです。今月は税務調査手続の話をさせてもらいました。今までだと考えられないような手続の法定化が実現しました。政権交代が無ければ実現しなかったでしょう。もちろんねじれ国会のために当初から大部後退しましたが・・。
              
 編集発行 株式会社プランニングファイブ