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     税理士中江博行事務所  NO.115

 




 

 
平成11年4月1日
お花見
 
 桜の花がそちこちに咲き始め、ピンク色の花がもう春が来たと告げています。今日から4月、新年度のスタートです。何かと厳しい経済情勢ですが、真新しい背広に身を包んだ新社会人を見ると何となくほっとします。どことなくぎこちないネクタイ、1着しかない紺の背広を着た新社会人が、どんな荒海に漕ぎ出して行くのかは判りませんが、願わくば、視界が開けてぱっと明るい未来を迎えて欲しいものです。
 まだまだ景気の先行きは不透明ですが、住宅ローンの減税効果により6月以降の一戸建て建物の新築着工件数は増加するのではないかと予想する向きもあるようです。
 しかし現実には、多くの企業で、会社の生き残りを掛けてリストラを進めています。リストラが一段落しないことには、消費が上向くとは言えないような情勢となっています。でも、リストラがかえって新しい人生の契機となることもありますし、結果は一概には言えませんので、是非人生のプラスにしてください。
 こんな時は、お花見でもしてパーっと盛り上がりましょう。
 
 新入社員を見ていて、この人たちが将来どうなるのかと思った時に、企業に今吹き荒れているリストラのことを思い出してしまいました。
 4月早々、暗い話で恐縮ですが、確定申告の時に相談を受けたこともあり、今回は退職にスポットを当ててみます。
 
 リストラに限りませんが、サラリーマンが退職をすることになりますと、通常、退職金が支給されます。指名解雇等では割り増しの退職金が出る場合もあります。この場合にはどのような税金が、課税されるのかお話ししましょう。
 


4月の税務・総務予定
(税務)
*所得税振替納税の振替日  4月16日
*個人消費税振替納税の振替日  4月26日
      
(総務)
*新入社員受入事務
 社会保険等の資格取得届
*昇級の検討
 

 退職金には一時金で支払われるものと年金で支払われるものなど様々な方法があります。退職金は、長年の勤労に対する功労報償、退職後の生活保障や賃金の一括後払い的な性質を持っていますが、この様な特殊な性質から、他の所得とは区別され、税制上、優遇されています。
 
 退職金は、通常退職時に一時に支給を受けますが、これを税務上では退職所得といい、税金が課せられます。
 退職所得の金額は
 (支給される退職金
    −退職所得控除額)×1/2
 で計算されます。
 この退職所得控除額は、勤続年数1年当たり40万円として計算します。勤続年数は1年未満の部分は1年とし、最低でも80万円が控除されます。また勤続年数が20年を超えると、この退職所得控除額は超えた年数1年につき70万円となります。勤続年数が長くなればなる程、控除される金額も多くなるわけです。
 退職所得控除額を数式で表しますと、次のようになります。
勤続年数が
*20年以下の場合
  40万円×勤続年数(最低80万円)
*20年を超える場合
 70万円×(勤続年数−20年)+800万円
 (但し、障害者となったために退職するような場合は、別の計算になります。) 
 
 例えば、リストラにより30年勤めた会社を辞め、退職金を1,500万円もらったとします。
 この場合の退職所得の金額を出すためには、まず退職所得控除額を計算します。
 70万円×(勤続年数30年−20年)+800万円=1,500万円
 この場合には、退職金退職所得控除額となりますから税金を課税されません。
 このケースで退職金が、2,500万円だとしますと、
 (2,500万円−1,500万円)×1/2=500万円が退職所得となり、これに所得税と住民税が課税されます。
 この場合の所得税は、税額表で計算しますと67万円となります。
 住民税(市民税、県民税)も同様に税率を掛けて求めますが、さらに特例があり、その住民税額の90%としています。現実には、特別徴収税額表で退職所得の住民税税額表により求めることになります。この場合の住民税は36万円になり、所得税と併せると合計で103万円となります。
 退職金を支払う会社では、この様に税金を計算して、それらを税務署や地方公共団体に支払い、納税は全て終わります。退職者は、通常はこれにて一件落着となり、面倒な申告はいりません。
 ただし、この様な計算が出来るのは、会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出した場合です。会社から書類をもらって、ちゃんと書いてください。もし、これに記載して提出しなければ、退職金の20%の税金が源泉徴収されますので、手取りが少なくなってしまいます。もちろん、この場合でも確定申告をすれば税金は戻りますが、それだけ手間はかかりますので気を付けてください。
 また、最近では、支給総額は決まっているのですが、会社の都合で2年以上の分割払いで支払われる場合があるようです。この様な場合にはどうなるでしょうか。分割金のそれぞれの支給日に退職所得が発生するのか、それとも退職の日に全額が退職所得の対象となるのか迷うかも知れませんが、退職の日の年に支給されるべき金額の全額を収入金額として退職所得を計算することになっています。
 退職金が支給されればいい方で、会社の業績不振のために、突然解雇を申し渡され、1ヶ月分の給与をもらって会社を辞めなければならない場合もあるようです。この場合のこの1ヶ月分の支払は、給与になるのか、税制上優遇される退職所得となるのかが問題になります。
 この1ヶ月分の支払については、労働基準法(20条@)で、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。」とされていることから、
会社はその分を支払ったのだと思います。これは、「解雇予告手当」と言われているもので、解雇、すなわち退職を原因として一時に支払われるものですから、その金額の多寡に関わらず退職所得に該当します(基本通達30-5)。 ですからこの分については、給与とは別に源泉徴収税額の計算が行われ、通常は税金はゼロとなるでしょう。
 



          Corner 

 




 

 平成11年改正税法、成立!!
 
 (株)P5では、経営計画策定、保険・
 不動産等の資産運用業務を行っております。
 
 3月24日に、今通常国会に上程されていた平成11年度改正税法案は、政府原案どおり可決・成立しました。 今まで、ここで書いた内容のまま成立しました。
 改正法は、具体的には
 @ 所得税・法人税の減税特別法、
 A 租税特別措置法の一部改正法、
 B 有取税・取引所税を廃止する法律
 C 地方税法の一部改正法
から成っています。いずれも「4月1日の施行」となり、各改正法に係る改正政省令も明らかにされてきております。特に改正政令は、各種特例等の具体的な要件がもりこまれるため、手に入りましたら、その中で特に重要な点について、出来るだけこの通信紙面でお知らせしたいと思っております。
 


 編集後記
 平成11年度がスタートしました。今年度も様々な税政改正がありますので、実務に携わる者としても大変ですが、皆様のお役に立てるよう頑張って勉強していきたいと思っております。
 せっかくきれいに咲いた税務署横の桜ですが、外は無情にも強風が吹き荒れています。今年も花見酒が楽しめずに終わってしまいそうです。
 編集発行 株式会社プランニングファイブ
 

    

Last Updated:8/APR/1999