P5 NEWS      SHONAN TAX OFFICE NO.208
 



 
 
平成19年1月1日
 
税は難解
 
 今年もどうぞ宜しくお願いいたします。皆様は新年はどのようにお迎えでしょうか。今年は、事務所は3日までお休みいただき4日からのスタートです。さて、今年最初のP5ニュース何を書こうか悩みましたが、この正月に税務関係の新聞に書いたエッセイの一部を紹介します。
 
 『税は難解−
 税法は難解だと言われる。「一読して難解。再読して誤解。三読して遂に解する能わず」(『税法入門』はしがき)は妙に納得できる。確かに、税法の条文が分かり難いという面は否定できないが、租税とは、納税者である国民の財産権に重要な影響を与えるものであることから、課税するための要件(課税要件)が一義的で明確に定められなければならないとされ、いやしくも解釈で課税要件が変更されてはならない。
 このため、解釈の余地をなくすため条文上でできうる限り明確に規定するあまり、ややもすると難解となってしまうことは、租税という性質からある程度は、やむを得ない。
 しかし、最近では条文上の規定を“質疑応答事例”で課税庁が解釈をする事例が増えている。それは、立法段階での規定の曖昧さ、趣旨の不徹底などで、質疑応答で対応せざるを得なくなり、ひいては制度のそのものの信頼を損なうことになりかねない。
 平成18年の法人税法の改正で創設された法人税法34条の定期同額給与の変更、事前確定届出給与の届出期限などの実務上予想される問題に対して、国税庁は、「役員給与に関する質疑応答事例」として公表した(平成18年12月)。また特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入における“業務主宰役員”や“常時従事役員“なども一義的・明確性についてはいささか疑問である。このため平成19年度税制改正で特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入の適用要件の緩和ばかりでなく、役員給与の改正が予定されている。
特に役員給与については18年の立法段階において検討されるべきもので
↑解釈で認めるとか認めないとかを決めることがあってはならなかった。立法府の責任は、重大である。』

 

 税法というのは、憲法や民法とは違い文言通りに解釈適用しそれ以下でもそれ以上であってもなりません。最近では、どうも行政があたらな法を作るのと同様に解釈したものを公表するため、それに納税者は振り回されています。これは立法府の責任。
 確かに解釈に幅を持つものもありますが、お好きなようにというものはありません。今年は参議院選挙。忘れずに・・そんな意味を込めて書いたものです。それに関連しますが、先月公表された質疑応答を紹介してみます。
 
 

1月の税務・総務予定
(税務)
*源泉所得税の納付期限 10日    (納期特例適用者 22日)
*法定調書の提出・・・ 31日
*給与支払報告書の提出・・・31日
*固定資産税の償却資産申告書の提出・・・31日
*個人住民税第4期分の納付

(総務他)
*年賀状の整理

 

役員給与関係】

 

 法律(法人税法第34条)の条文は、

 原則損金不算入で、次のものを除くと書かれていて、その一つが、
同条項1号の“定期同額給与”で、

 

「その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与その他これに準ずるものとして政令で定める給与」
 

政令(69条)は、次のようになっています。

 

「一  定期給与(その支給時期が1月以
下の一定の期間ごとであるもの)の額につきその事業年度開始の日の属する会計期間(事業年度)開始の日から3月を経過する日までにその改定がされた場合における次に掲げる定期給与
イ 当該改定前の各支給時期における支給額が同額である定期給与
ロ 当該改定以後の各支給時期における支給額が同額である定期給与
 二 定期給与の額につき当該内国法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりその改定がされた場合(減額した場合に限り、前号に規定する場合を除く。)の当該事業年度の当該改定前の各支給時期における支給額及び当該改定以後の各支給時期における支給額がそれぞれ同額である定期給与
 

  チョット難しいですが、法律の条文をそのまま紹介しました。これを読ん

で次の質問を考えてみてください。

 

Q 取締役Aは、その統括する部署に於ける法令違反による行政処分を受けたことから、臨時株主総会においてAの報酬を3ヶ月間20%減額することを決議しました。
 通常の年度報酬1,200万円
 減額後年度報酬1,140万円
 この場合、1,140万円の全額が損金不算入になるのでしょうか。
 

A 法律をそのまま解釈してみてください。これは、1,140万円が損金不算入になりそれ以外の解釈はあり得ません。

 しかし、遭ってはなりませんが、現実には起きますし、社会的責任のある企業では当然このような対応も必要となります。これを全額損金不算入としたのでは、制度として成り立ちませんが、法律は、法律としてやむを得ません。そこで、制度を守るために、立法の不備だとおもいますが、国税庁では次のように理屈を作って全額損金にしないと公表しました。・・「企業秩序を乱した役員の責任を問うべく,一定期間の役員給与の減額処分を行うことは,企業慣行として定着しており,これを同額の定期給与の支給と取り扱わないとすれば,実態からかけ離れることにもなりかねません・・・役員給与を一時的に減額する理由が,企業秩序を維持して円滑な企業運営を図るため,あるいは法人の社会的評価への悪影響を避けるために,やむを得ず行われたものであり,かつ,その処分の内容が,その役員の行為に照らして社会通念上相当のものであると認められる場合には,減額された期間においても引き続き同額の定期給与の支給が行われているものとして取り扱って差し支えありません」と。

 

Q @事業年度開始から7ヶ月目に月額80万円を100万円にしました。
A経営状況の著しい悪化ではないのですが、同じく7ヶ月目から月額100万円を80万円にしました。
 @、Aの場合いくらが損金不算入になりますか。
 

A 法律を読めば共に全額損金不算入です。しかしそれでは担税力のない所に課税することにもなりかねません。

 

そこで国税庁は、次のように説明しました。

 

 @の場合は、「定期給与の額について,ご質問のような事業年度の中途の増額改定が行われた場合であって,増額後の各支給時期における支給額も同額であるようなときなどは,従前からの定期同額給与とは別個の定期給与が上乗せされて支給されたものと同視し得ることから,上乗せ支給された定期給与とみられる部分のみが損金不算入になる」と。すなわち120万円が損金不算入となります。

 

 Aの場合は、「当初,定期同額給与として支給していた給与について減額改定を行い,減額後もその各支給時期における支給額が同額である定期給与として給与の支給を行っているときには,本来の定期同額給与の額は減額改定後の金額であり,減額改定前は,その定期同額給与の額に上乗せ支給を行っていたものであるともみられることから,減額改定前の定期給与の額のうち減額改定後の定期給与の額を超える部分の金額のみが損金不算入とな(る)」としています。結論はそうあるべきだと思いますが、新たに定義を置かない限りこのような解釈を導き出すことは無理では。

 
省略
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所得税確定申告特集−1
今月から3ヶ月間は、確定申告特集−誤りやすい事例を取り上げます。
 

1(誤り)事業を引き継いだ相続人の青色申告承認申請書の提出期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内である。

 

(正しくは)死亡の日が

1月1日〜8月31日・・4ヶ月以内
9月1日〜10月31日・・12月31日まで
11月1日〜12月31日・・翌年2月15日
    (所法144、147)
 

2(誤り)青色申告者が他の者の扶養控除等に該当するかどうかは、譲渡所得の特別控除と同様に青色申告特別控除前の所得金額で判定する。

 

(正しくは)青色申告特別控除後の金額で判定します。ですから、事業主は、他の人の扶養控除等に該当することもあります。なんだか変ですが、是非青色申告を。

 

3(誤り)インフルエンザの予防接種の費用が医療費控除の対象となる。

 

(正しくは)疾病の治療に伴うものではないので医療費控除の対象にはなりません。

 

4(誤り)遺族年金は課税。

 

(正しくは)非課税です。

 

5(誤り)サッカーくじ当選金は課税。

 

(正しくは)非課税です。(スポーツ振興投票の実施等に関する法律16)

 

6(誤り)被相続人の死亡によって取得した生命保険金は、みなし相続財産として相続税が課税。

 

(正しくは)保険料負担者が、被相続人の場合はみなし相続財産、受取人の場合は一時所得、受取人以外の者であれば贈与税−契約時に気をつけるところです。

 

7(誤り)非居住者が受け取る家賃収入20%の源泉分離課税で課税関係は終了し申告不要。

 

(正しくは)非居住者は源泉徴収されたうえ申告が必要(総合課税)。個人が自己又はその親族の居住用に借りたものは源泉徴収されませんが、非課税ではないため、申

告が必要。
 

省略

 

 編集後記  
 新年号から、専門用語ばかりになってしまいました。初めての方は数回読めば判るかも知れません。さもなければ睡眠薬代わりにお読みください。そしてすばらしい初夢をごらんください。
 今年もどうぞ宜しくお願いいたします。
 編集発行 株式会社プランニングファイブ