P5 NEWS      SHONAN TAX OFFICE NO.174
 



 
平成16年3月1日
ストックオプション
 
  毎年、この時期は所得税の確定申告に追われます。資料整理から始まり、決算書の作成、申告書の作成、納付書の送付、申告へと続きます。通常の法人税の確定申告と大きく相違する点は、源泉徴収票、控除証明書や医療費の領収書など所得税の申告に資料を添付する場合が多いことです。法人でも添付書類は無いわけではありませんが、別表、内訳書を除いて通常は有りません。
 

  医療費を控除しようとすると、良く、おむつの領収書が出てきます。年老いた親がいて、寝たきりの場合にはおむつは当然。でも医師の発行する「おむつ証明書」の添付が必要になります。

 

 道路の拡張工事などで公共事業施工者である国や地方公共団体から土地を収用され、現金で補償金を貰ったり、別の不動産を購入するときでも譲渡所得の申告に当たって、「収用証明書」を添付しなければなりません。相続で取得した財産を相続税を払うためにすぐに売った場合でも、その相続税の申告書の控えをわざわざコピーして添付します。申告書以上に添付書類が多くなることは少なくありません。

 

 今年から電子申告がスタートしますが、電子申告をしても、すぐに添付書類を郵送しなさいとのこと。

 添付書類も本当に必要なものかどうか、これから考えていかない限り税務行政のIT化など先のことになりそうです。
 

 わが国の電子申告は、自己の署名に代わる電子認証を必要とします。例えば自分であることを第三者に証明して貰ったICカードを読み込ませて署名をします。この方法は今後一般的になり、電子認証カード全ての納税者が持つようになれば、そのときは使えるようになるかも知れませんが、果たして現段階では・・・

 申告者等の確認手段が重要なことが確かですが、今でも他人になりすませて申告することは可能ですが。でもやらない。
 

3月の税務・総務予定
(税務)
*贈与税の申告・納付   15日
*所得税の申告・納付   15日
*個人消費税の申告・納付
 31日
(総務他)
*新年度給与算定
*年度事業予算策定

 
 中小企業の株主、経営者にも色々な方がいます。個人企業と代わらない発想で舵取りをする方。片や翼を広げるように大きな視野で突き進んでいく方。後者の発想の経営者は、大きな責任を引き受けて企業を発展させようとします。そういう経営者は、株を上場をしたいと思うかも知れませんが、最初は従業員に自社の株式を所有して貰いたいと考えるようです。持株を譲渡したり、第三者割り当て増資をしたりして従業員に株を移転します。
 株主が身内だけの時より経営者もその責任は重くなりますし、従業員も一段高い立場からものを見て発言するようになります。その意味では、株主が多くなることは良いことです。
 

 大会社やベンチャー企業では、チョット違った方法で、役員、従業員に株を所有させます。それがストックオプションです。

 ストックオプションは、役員や社員が、一定期間内に、あらかじめ決められた価格で会社から自社株を購入できる権利を取得することで、株価が上がれば、得る利益も大きくなるため、業績に貢献した役員らのボーナスとして利用する企業が少なくありません。これを報酬型のストックオプションといいます。持株制度と言うより賞与。
 平成9年の商法改正で日本企業でも導入が可能となり、昨年で1,200社に超える企業がストックオプション(SO)を導入しています。
 
 図表 省略
   
 ストックオプションでは、付与が決定してから権利行使するまで一定の期間のブロックが掛けられ、株価が高くなれば、権利行使します。上記では、一定の時期に1,000円で株を購入する権利を付与されています。行使期間内に株が付与価格より高ければ買うでしょうし、低ければ権利不行使とします。
 この場合には、権利行使時に時価
1,500円の株を1,000円で買う権利が与えられ、購入した時点で、aの所得が認識されます。
 a=1,500円−1,000円=500円
 そして売却時には、bの株式の売却益が発生します。
 b=1,800円−1,500円=300円
 なお、権利行使価額が1,200万円以下であるとか権利行使が付与時から2年〜10年の間であるとかの一定の条件に当てはまると、権利行使時(a)に課税をしないで(措置法29の2)、売却額と権利行使価額の差額(a+b)が株式の譲渡益として課税されます。これを税制適格ストックオプションといい、取得した株式を「特定権利行使株式」といいます。
 

 先月、何度か新聞紙上でストックオプション裁判の判決が取り上げられていました。

 これは、ストックオプションの権利行使利益(a)の所得区分の争われた事件です。米国の親会社から付与されたストック・オプションの権利行使利益を一時所得(occasional income)として申告したところ、原処分庁が給与所得
(employment income)と認定したことにより、どちらをとるかの高裁の判決が出ました。地裁段階のこの種の判決では、給与所得と一時所得とが相半ばした判断をしていましたが、先月の高裁では、給与所得としています。
 

 問題は、雇用関係のない会社からの利益の付与や、退職後の権利行使が給与所得といえるかです。

 高裁は、“必ずしも直接の雇用関係にない給付者からの給付であっても、経済的には使用者からの給付と異なるところはなく、法律上の権利義務関係の相違を強調して給与所得該当性を否定すべきでない”としています。
 出向の場合にも出向元法人が給与の支払をすることはありますが、合理的な理由が認められなければ贈与となるのが一般的です。給与課税をしたい気持ちは山々でしょうが、現行法では、このように拡大解釈をしない限り無理でしょう。平成13年の商法改正でストックオプションの付与範囲が、自社の役員、従業員のほか、関連会社役員、顧問弁護士にも広がり、所得区分は益々難しい問題となってきました。
 

 話は代わりますが、最近、サラリーマンが勤務期間中にした発明に対して高額な対価の支払を認めた判決が出てきています。これらの事例は、殆ど企業を退職した研究者が元の勤務先に発明の対価を求めるもですのです。これらの対価はどのように課税されるかは興味深いところです。所得税の基本通達(23〜35共-1)では、特許をうける権利の承継に関するものであるときは譲渡所得、実施後の成績に応じて支払をうければ雑所得、特許には至らない工夫で、その工夫が職務の範囲内の行為の時は給与所得、それ以外は一時所得とされています。スットックオプションとの問題も含め、税法とは一筋縄にはいかないでしょう。

 
 省略

 

 SHONAN TAX OFFICE
     税理士 中江 博行
     税理士 大野千寿子
     スタッフ一同
P5コーナー
(株)P5では、経営計画策定、保険・不動産等の資産運用、
相続対策業務を行っております。

 
 

確定申告

 
 国税庁では確定申告時期に多い問い合わせ内容を掲載しています(http://www.nta.go.jp/category/kakutei/qa/01.htm)。

 

その中で誤りの多い事例として・・

 

○ 基礎控除の記載漏れ
 基礎控除はすべての方に適用されますので、必ず書いてください。
○ 定率減税の適用漏れや計算誤り
 定率減税は、「平成15年分の所得税額×0.2」と「25万円」のいずれか少ない方の金額です。
○ 老年者控除の適用漏れや適用誤り
 申告される方ご本人が、昭和14年1月1日以前に生まれた方で、かつ、平成15年分の合計所得金額が1,000万円以下の方は、平成15年分の確定申告で「老年者控除」が受けられます。
○ 配偶者特別控除の適用誤り
 合計所得金額が1,000万円を超えている方は「配偶者特別控除」を受けることができません。
○ 医療費控除の計算誤り
 高額療養費、出産育児一時金や生命保険会社からの入院給付金などで補てんされる金額は、医療費の合計から差し引きます。
○ 一時所得の申告漏れ
 生命保険会社などから、満期金や一時金を受け取られた方は、その収入が一時所得として申告する必要がないか、生命保険会社などからの書類で、もう一度確認してください。一時所得の記載漏れは、資料が税務署に回り、後で呼出が来ますので忘れないように。
 
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☆塗装費用の資本的支出と修繕費
 アパート経営をしていますと、よく塗装を行うことがあります。この場合に、修繕費と同じように、60万円など金額で判定するのではないかと思われるかも知れませんが、通常、使用塗装や施工工法等に改良と認められる事実がない限り修繕費として必要経費に算入します。
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1、今月のパソコン教室は、
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 編集後記  
 今年もまた書類の山の中で、3月を迎えています。今回の申告による売上高が1千万円を超す事業者は、平成17年には課税事業者になりますが、かなりの事業者が該当しそうです。再来年の今頃は、今までの申告に消費税の申告が加わって一体どんな状態になるのか心配です。そんなことより、今年の申告を終えることの方が先ですね。
    編集発行 株式会社プランニングファイブ