P5 NEWS      SHONAN TAX OFFICE NO.169
 




 

平成15年10月1日


税務調査



 この時期は,税務調査が一番多いときです。税務調査は,通常,税務署の職員が,申告が正しくされているかを確かめることで,脱税犯を摘発する強制調査とは異なる任意調査のことです。調査は,該当する納税者に,口頭又は書面による質問,帳簿書類等を検査する方法で行われます。任意調査ですので,物理的な実力を行使して強制的に行われることはありませんが,不答弁,調査の拒否,妨害については処罰が用意されていますので,調査に応じる義務はあります。
 法律上は,税務署の職員は、所得税,法人税などに関する調査について必要があるときは、納税者に質問し、又はその者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査することができるとした規定になっています(所得税法234条など)。この規定には,解釈上の問題をいくつか含んでいます。例えば,「必要があるとき」とは、どういう場合を指しているのか。裁判所の判決では,「必要があるとき」とは、客観的な必要性があるときで,税務職員の自由な裁量に委ねられてはいないとしています(最高判48.7.10)。
 しかし,この“必要性”の解釈には、疑うに足るだけの個別的・具体的な事由がなければならないのか,それとも疑うだけの根拠がなくても、申告内容が正しいかどうかを確認する必要があれば客観的必要性が認められるのかとの考え方があり,多くは,後者を取っていますので、税務職員の自由な裁量に近い立場を取っているとも言えますが,理由もなく毎月のように調査を繰り返すとかいう嫌がらせや,税務統計資料の収集等のために調査することができないのは言うまでもありません。
 また,税務職員は,税務調査の際に,調査の理由及び必要性の個別的、具体的な理由を開示すべきかという問題もありますが,権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられ,理由の開示を必要としないと一般的には考えられています。
10月の税務・総務予定

(税務)
*個人事業税・
 個人住民税(3期)の納付  通常月末
(総務他)
*秋の厚生事業の実施
 

 税務調査の問題には,納税者の取引先に対する調査(いわゆる反面調査)があります。
 反面調査は、本人調査のための補充的なものですが,本人の承諾を必要とするか、あるいは本人調査後で無ければできないか等の対立があります。一般的には,反面調査は、特に必要があると認められる場合のほかは、本人調査によって充分な資料の取得収集ができなかった場合のみ認められると考えられ,難しくなりますが答えらしい言い方をしますと、“税務調査の必要性と納税者の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度内”とされています。しかし,現実には本人調査に先立って、反面調査が行われる場合は少なくないのが実情です。
 調査の連絡は、税理士に依頼され、委任状(税務代理権限証書といっています)を添付した納税申告書を提出している場合には,通常、依頼された税理士にまず行われ、税理士も調査に立ち会うことになります。専門家でない納税者は,税法の法的な判断をすることは困難なことが多く,税務職員の主張が正しいかどうかの判断に迷うことになりかねません。税理士が立ち会うことは,納税者の無用な負担を取り除くことになります。また行政サイドにとっても,法に定められた正しい申告のためのものであるという目的は共通ですので,納税者とのトラブルを防ぎ,円滑な調査が実施できるというメリットがあります。
 調査は,通常,前もって連絡があり調査日程の調整が行われますが,時として連絡がなく突然行われることがあります。これを「事前通知のない調査」と言っています。多くは,現金商売など,売上の把握が困難と思われているところに実施されることが多く,判例ではそれ自体違法とはされていません。しかしこの判例の多くは,申告納税制度の根幹を揺るがす事例に限定されていますので、それをすべて否定するものではありませんが,帳票等に基づき記帳が行われ自らの納税を確定しその内容を添付し,明らかにしている納税者に対してまで広げることは,逆に申告納税制度を否定することにもなりかねません。税理士は必要ないと言っているようなものですから,はっきりした対応を取ることにしています。「事前通知のない調査」があった場合には,納税者の方も急で予定が詰まっていることでしょうから,その旨はっきり言ってお帰り頂いて下さい。
 でも,最近はまず無いと思います。 国税庁は,平成13年3月,各局・署にこれについての内部通達を出しています。これによりますと・・
 「税務調査に際しては、原則として、納税者に対し調査日時をあらかじめ通知する。
 ただし、事前通知を行うことが適当でないと認められる次のような場合については、事前通知を行わない。
 @業種・業態、資料情報及び過去の調査状況等からみて、帳簿書類等による申告内容等の適否の確認が困難であると想定されるため、事前通知を行わない調査(無予告調査)により在りのままの事業実態等を確認しなければ、申告内容等に係る事実の把握が困難であると想定される場合
 A事前通知することにより、調査に対する忌避・妨害、あるいは帳簿書類等の破棄・隠ぺい等が予想される場合(一部省略しています)」
 税務は,法ですので絶対に正しいというものではなく、課税庁の判断が必ず正しいというものではありません。

 最近,NTTドコモが,税務判断について裁判所に提訴した事例があります。
 ドコモは,PHS基地局をNTTの回線に接続する際,NTTに対して1回線あたり72,800円(総額280億円)を支払っていました。これが10万円を切っていることから,少額の減価償却資産として1年間で全額償却する処理を行っていました。このPHS基地局をNTT回線へ接続するエントランス回線(LANみたいなものだと思いますが?)が,単体で機能するか,複数まとめたときに機能を発揮するかで争った事例です。単体機能でしたら全額経費ですが,複数一体機能でしたら20年で償却することになってしまいます。
 ドコモは,「従来から携帯電話,自動車電話のエントランス回線についても同様(1年間で全額償却)の処理をしている。これが過去の税務調査で問題視されたことはない」ではないかと。一方,同じくPHS事業を手がけるDDIポケットでは,アンテナ敷設経費を拡大したサービス区域ごとにまとめ,20年償却として処理しているとしたものもあり一概には言えないのも事実ですが・・・はたしてDDIの処理が正しいと言えるかは・・・
 ちなみに庁舎の決算内容です。
    2003年3月決算期(億円)
   ドコモ DDIポケット
総営業収益  48,091   1,975
営業利益  10,567    202
当期純利益   2,125    170
減価償却費   7,492    395

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     SHONAN TAX OFFICE
     税理士 中江 博行
     税理士 大野千寿子
     スタッフ一同
P5コーナー
(株)P5では、経営計画策定、保険・不動産等の資産運用、
相続対策業務を行っております。

 


交際費と紹介手数料



 顧客の紹介や取引の情報を受けた場合に情報提供料、紹介料などの名目で支出することがあります。この場合、販売促進費や支払手数料に該当するか、あるいは交際費となるかについては微妙なところがあります。
 これらの支出について、取引の斡旋業者以外の者に対して情報提供料として支払った場合でも、次の3つの要件を満たしているなどの正当な対価であると認められるときは交際費とされないことになっています(租税特別措置法通達61の4(1)-8)。
 (1)あらかじめ締結された契約に基づくものであること
 (2)提供を受ける役務の内容が契約上具体的で、これに基づいて役務提供が行われていること
 (3)価額が役務の内容に照らして相当と認められること
 この場合に「契約」とは、必ずしも契約書を指すわけではなく、口頭の約束でも良いとされていますが、商談メモなどの資料を保存しておけば後日の証拠となります。また、成約金額の何パーセントというような支払方法の場合には、金額の根拠を記した書類を作成する必要があります。領収書さえあれば良いと思いがちですが、支払の内容を示す書類がより重要となります。
 ドライブインの経営者が観光バスの乗務員に支払ったチップが交際費等に該当するか否かについて争われたことがありますが、たとえあらかじめ締結された契約に基づくものであっても、職務上当然の行為を行った者に対する謝礼は、今後も乗客を案内してくれるという期待を込めて支出するものであって、行為に対する支払でないとして交際費とされています。

1、今月のパソコン教室は、
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 編集後記  
 スポーツの秋第一弾、なかゆき会ゴルフコンペにご参加いただいた皆様、有り難うございました。和気藹々、楽しいゴルフでした。次回も多くの皆様のご参加をお願いいたします。さて、10月早々ですが、税務の世界では既に年末調整の準備が始まりつつあります。そして、なかゆき会幹事の間では忘年会の相談も。どちらも、準備が整い次第ご連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
                                     編集発行 株式会社プランニングファイブ